The After Party

ライブの打ち上げに、こっそり同席する感覚。ミュージシャンの本音が聞こえる特等席へ、ようこそ。

アンナ・マレェ | 第1話:「動く」ということ

2026年3月25日 • アンナ・マレェ

アンナ・マレェ さとレックス(以下さとレ): 改めまして、今日よろしくお願いします。

アンナ・マレェ(以下アンナ): よろしくお願いします。

さとレ: 場の雰囲気として、打ち上げ会場に読者の方がこっそり覗き見しているような体でやりたくて。ちょうど昨日、南柏areでご一緒したので、設定に近い状態でいられるかなと思っています。

アンナ: そうですね。確かに。

さとレ: アンナさんのパフォーマンスって、いつも「祈り」だなと思って見ているんですよね。初めてお聞きになるリスナーの方にご説明すると、即興で歌いながら、バレエをベースにした即興舞踊でステージから客席までを使って、踊りながら演奏しながら……というのがアンナ・マレェさんのスタイルなんですよね。

アンナ: あ、先に自己紹介をしなきゃいけなかった(笑)。改めまして、そういう形で演奏・表現活動をしています、アンナ・マレェといいます。よろしくお願いします。

さとレ: 今日の主催を務めます、さとレックスです。よろしくお願いします。


さとレ: そのスタイル、どこから来たんですか?

アンナ: 今のスタイルは、去年ぐらいから始めたばかりで。まだ1年も経っていないんです。それまではクラシックギターで弾き語り、自分の曲を演奏するという形でやっていました。

もともとゆったりした曲が多かったんですけど、2023〜24年ぐらいから、動きを取り入れた表現をされているアーティストさんを目にする機会が増えていって。自分の中にある動的な感性を、どう形にすればいいかな、と考え始めていったんです。

さとレ: 決定的な瞬間はあったんですか?

アンナ: あります。モーリス・ラヴェルの「ボレロ」にモーリス・ベジャールという方がバレエとして振り付けたものがあって、その存在は知っていたんですが、通しで観たことがなくて。それでジョルジュ・ドンというダンサーのボレロを観てみたら……もう胸がいっぱいになってしまって。「これだ、私が欲しかったものはこれだ」と思ったんです。

さとレ: ダンサーとして、という感覚で?

アンナ: 私はダンスは今も勉強中で、全然プロとしてやっているわけじゃないんですが。でもその表現に通底するものが、もうグワーッと来てしまって。そこから少しずつ、自分の舞台でも動きを取り入れて試行錯誤しながら、今に至る感じです。


さとレ: さっき「動的」という言葉が出ましたけど、僕の生業がコンピューターのエンジニアなので、聞きながら面白いことを思っていて。エンジニアの世界で「動的」というのは、「その都度変わる」という意味なんです。例えば「今日は□です」という箱があって、□には当日の日付が入る。「今日は」と「です」の部分は静的で、何月何日の部分はその都度変わる——だから「動的」と言う。

アンナ: じゃあ、穴埋め問題の穴の部分、みたいな?

さとレ: そうそうそうです。で、今の話を聞いていて思ったのが、躍動感という意味の「動的」だけじゃなく、毎回変わるという意味の「動的」も、アンナさんの表現に入ってくるなって。

アンナ: 全く考えたことなかったですけど、確かにそうなりますね。面白い……ちょっとびっくりしました。そうか、なるほどね。


さとレ: 即興の中で、どのくらいが決まった歌詞で、どのくらいが今初めて出てきた言葉なのかって、見ている側には全然わからないんですけど。どんな風にその日の言葉を持ってくるんですか?

アンナ: 最近はもともとある詩を表現することが多いですね。即興でやるときは、直前まで考えていたこととか、その場で生まれてきたものです。フリースタイルのラッパーさんみたいに韻を踏みながら言葉を紡ぐことが私にはなかなかできなくて、脈絡がなくなってしまうこともあるので、最近は即興で詩をやらないことも多くて。その分、動きやヴォーカリーズ——母音だけの部分とか——でその場に湧いてきたものを出しています。

さとレ: 即興演奏って、迷ってる暇がなくて走り続けるしかない感覚があるんですよ。お尻に火がついちゃったから、着地できるところまで走り続けるような。アンナさんはどんな気持ちでやっているんですか?

アンナ: 「即興をやろう」と意識するとダメなんです、私は。「フリースタイルで」と言われたら多分できない。出てきたものが結果的に即興的に見えるというのはあるかもしれないんですけど。なんか……意識的であることを一旦緩める、みたいなことをしている気がします。無意識に呼ばれて出てくる感じ、というか。

さとレ: 場の空気に引き出される感覚なんですね。

アンナ: うまくいってる行ってないは別として、即興をやるときは、そういう気持ちかもしれないです。


第2話につづく